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1 労働問題の現状
労働問題といえば、解雇問題、賃金問題、人事異動や休職問題、パワハラ、セクハラなどの職場環境問題、機密持ち出しや不正行為に対する懲戒問題、そしていわゆるブラック企業の問題などがすぐに思い浮かびます。
残業代の未払請求、パワハラ、セクハラを受けた社員から加害者と会社に対する損害賠償請求、顧客情報その他社内機密持ち出しに対する民事刑事の責任追及、有期雇用契約の雇止め制限問題、ブラック企業問題等は、昔ながらの労働問題に対して、今日的労働問題といえます。
残業代の未払請求では1人当たり数百万の支払いが命じられる事例も沢山出ています。
社内における地位を利用した性差別や部下の苛めを許さないとするパワハラ、セクハラ排除の考えが定着し、意識改革のできなかった会社経営者や上司が地位を失ったり職を失う事態が発生しました。
情報のデジタル化が発達したので企業秘密の持ち出しが実に容易になり、頻繁に同種の事件が起きるようになりました。
労働力の流動化を大義名分に非正規雇用社員が爆発的に増え、雇用不安と社会不安を招いていますが、法律の世界では少しでも雇用を安定させようとして有期雇用契約の雇止め制限の法理論が進化しています。
ブラック企業を公表し、若者に注意を呼びかける風潮が広がると共に、ブラック企業対策も進み、関連するメディア情報も活発です。
経営者は必死になって人件費を削減しようとし、労働者は懸命に職を守ろうとして、両者の間に抜き差しならない紛争の生ずることが珍しくありません。
2 今日は労働者のため、明日は中小零細会社のために
弁護士の世界では立場性の明確にわかれている領域があります。それは医者側に立つのか患者側に立つのかという医療事故紛争の世界と、経営者側に立つのか労働者側に立つのかという労働紛争の世界です。
法律事務所によっては、どちらかの立場でしか仕事を受けないところもありますが、一般民事を取り扱う圧倒的多数の法律事務所では、相談があれば立場性を超えて、目の前の依頼者のために奔走しています。
私のところでも、労働者の立場で未払残業代の請求をしたり、有期雇用契約の雇止め無効を争ったりする一方で、顧問会社から相談があれば、全く逆の立場での相談にのることもあります。
しかし法的正義がどの辺にあるのか、一体どのような決着が妥当なのか、解決可能な決着とはどのような内容か、絶えずこのような課題に悩みながら、案件ごとに事実や証拠を集め、研究工夫をする点では共通です。
労働問題において労働者の立場が弱いのは厳然たる事実ですが、中にはとんでもない労働者がいて中小零細企業の社長がキリキリ舞いさせられる場合もあります。
会社側だからとか労働者側だからと、その立場性からくる原理原則に凝り固まることなく(依頼者のための代理人という意味では立場性から完全に離れることはできません)、事実と証拠を基に実現可能な望ましい解決を模索し、解決に努めているのが実情です。
このような仕事の進め方を、曖昧というべきか、知恵や体験の蓄積を活かしたものと見るのか、評価が分かれるかもしれません。しかし私はこのような仕事の進め方こそが、現実に可能な最良の解決を必死に求めて奔走する市民法律事務所の真骨頂だと考えております。
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