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1 刑事弁護の始まり
ヤクザ、不良、犯罪傾向の強い人など、刑事問題が身近なところにある人々もいれば、ある日突然、刑事事件の被疑者として逮捕されてしまい、本人も家族もオロオロするような方々もいらっしゃいます。 刑事事件になりそうだとか、警察の捜査が始まった段階から相談のあるケースは比較的少なく、逮捕された、さあ大変だ、といったところから弁護士への相談となることが通常のケースです。 となれば、弁護士としての最初の課題は、如何にスピーディーに逮捕されたご本人と面会(これを接見といいます)するかです。 逮捕されたご本人の身になって考えた場合、事情はいろいろです。 犯罪となるような事をしてしまった場合もあれば、その逆で、逮捕容疑の行為をしていないのに逮捕され、憤懣やるかたない怒りを感じて いる場合もあります。 さらには、そのいずれでもなく、逮捕容疑事実となっている行為自体は行ったが、それが犯罪に問われること自体に納得がいかない場合もあります。 どのような場合でも、一刻も早く接見してご本人の不安を軽くし、事案の把握に努めようとする弁護士の基本姿勢は変わりません。
2 事実へのアプローチ
弁護士は、逮捕された方と少しでも早く接見して、何時、どこで、誰に、どのような事が起きたのか、これらを我が目と耳と足で、できるだけ正確、周到に把握して真相に肉薄したいという思いから活動をスタートさせます。 この場合、弁護士は依頼者(刑事手続では被疑者とか被告人と言われます)の話を、勿論、一番重視しますが、しかし、だからといって鵜呑みにはしません。 ご本人の誤解や思い違いで語ったり、ご本人が事の一面しか語っていないなどの理由で、全体として間違ったイメージが弁護士に伝わってしまう心配があるからです。 弁護士がもっとも警戒するのは、依頼者が捜査官に迎合してありもしないことを認めてしまっていないか、どこからかプレッシャーがかかったり、誰かの立場に気を回して、説明の一部が作り話になっていないかという点です。 逮捕された被疑者は、思いもよらない事態に気も動転して、正確に、行き届いた話を、弁護士にすることがとても困難な精神状態に追い込まれてしまうものです。 依頼者の話が不十分であったり、間違っていたりすることもありますので、単純に鵜呑みにするような受けとめ方をせず、不完全にしか語られてない出来事の全体像を把握できるように弁護士はいろいろ考えて行動します。 これは決して依頼者を信用していないということではなく、依頼者を真に守るために必要な慎重、周到な弁護士の姿勢なのです。
3 一刻も早く面会を
思いもよらず逮捕されてしまった方は、驚きと絶望で、正常な神経ではいられなくなるのが普通です。 そのような状態で厳しい取り調べが始まるのですから、頑張って自分の体験したこと、見たり聞いたことを、どこまで正確に話すことが出来るか大変難しい面があります。 早く留置場から出たい、長引くといろいろな関係者に迷惑をかけてしまうといった心配から、逮捕されると、とにかく早く取り調べが終わる事を願って、不正確なことや、事実に反することでも喋ってしまいかねないのです。 だから、大切なのは一刻も早く弁護士がご本人と面会することです。弁護士は面会を通じてご本人に落ち着いてもらい、これから始まる事態をご説明し、正しいことを言い通すための心の準備のお手伝いをします。
4 身柄の取戻し
逮捕されて最初の3日間の身柄拘束、続いて10日間の勾留(第一回)という身柄拘束、さらにもう10日間の勾留(第二回)となり、逮捕されると、ひとまず合計23日間の身柄拘束が想定されます。(これは容疑事実が一つの場合です。他にも容疑があると、別件での再逮捕といって、逮捕が繰り返されることがあります)。 いつまで身柄拘束が続くのか、家族に迷惑がかかってしまう、会社に知れたら退職に追い込まれてしまう、明日の新聞に自分のことが出てしまうのではないか等々、逮捕されたご本人の心配や不安、恐れと絶望は図りしれません。 ですから弁護士は、逮捕された方の身柄をどうやって少しでも早く取り返すかを考え行動に移ります。 できれば勾留請求される前に検察官と面会して、身柄拘束の必要性がないことを説明し釈放を求めます。もっともこの活動によって釈放を実現することは、大変困難です。 検察官から第一回の勾留請求が出たときには、身柄拘束の必要性がないことを裁判官に面会或いは書面を提出して説明し、勾留請求を却下してもらうように活動します。 勾留請求が却下されない場合は、準抗告という手続きで身柄拘束の不当性を訴えます。検察官からの第二回勾留請求がされた場合も同様に活動します。
5 弁護士のチームプレー
飲酒に伴う公務執行妨害容疑で逮捕された被疑者の勾留請求に対し、これを却下に持ち込んで身柄の早期取り戻しを実現したことがあります。 若い弁護士は、熱意と時間をかけた執拗な活動で、ベテラン弁護士とはひと味違った持ち味を発揮します。 経験豊富なベテラン弁護士は、それらの活動から、経験を活かした見通しを立てることができます。 限られた時間内での戦いでは、こうしたチームプレーが活きてきます。 |