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1 不満、苛立ち
弁護士に依頼して満足な成果を上げてもらい、納得された方がいらっしゃる反面、これとは逆で、頼んだことが思い通りに進まない苛立ち、けれど、自分では出来ない歯がゆさ、不満や注文をつけにくい不自由さを体験された方もいらっしゃると思います。
2 不満、苛立ちの原因
依頼者と弁護士の間に生ずる不満、不信、葛藤は、依頼者の期待と、弁護士が実現できる結果との間に、次第にズレが生じることがおおよその原因です。
ではこのズレの原因は何かといえば、弁護士の力不足、不熱心、不誠実であったり、依頼者がもともと過大な期待を抱き、無理な注文をつけていたことであったり、あるいは、また、その両方が重なったりと単純ではありません。
またズレの根底には依頼者と弁護士の相性の悪さが見られることもあります。
3 自分にふさわしい弁護士探し
本来、信頼と協力関係で結ばれていなくてはならない弁護士と依頼者が、このような不信を抱えた関係になったのでは、いい解決の得られるはずがありません。
このようにならないためには、いうまでもなく良い弁護士に出会うことですが、さて、どうしたら自分にとって好ましい弁護士に出会えるのか。これは大変難しい問題です。
まず一つ申し上げたいのは、自分にとっての良い弁護士が、必ずしも他人にとっても良い弁護士とは限らないことです。それは相性の良し悪し、価値観や感性の近さも大事だからです。
弁護士の提供する法的サービスの内容は、法律専門家としての技能の高低に左右されると共に、人間的な暖かみ、親切心、説明力、忍耐強さなど、当の弁護士の個性、人間性にも左右されるところが大きいのです。
その意味では、法的技能の高さと共に、円満な人間性、相手の思いや話しに対する感度の高さ、十分なコニュニケーション能力をもった弁護士をみつけたいところです。
弁護士情報は口コミもありますが、今は、法律事務所のホームページや弁護士会のホームページをみることがもっとも手近な方法です。
しかし、それでも本当のところはなかなか分かりません。そもそも、ホームページを見て法律事務所を訪問しても、実際にあなたの問題を担当してくれる弁護士が誰なのか、その人の経験、人間性、法的技能はどうか、となると分からないことばかりだからです。
4 弁護士探しの若干のヒント
良い弁護士の見分け方を次のように整理してみました。
(1) しっかり人の話を聞き、
(2) そこから問題点を掴み出す力があること、
(3) 掴みだした問題を解決する具体的な方策をたて、
(4) 迅速、的確に方策の実践が出来る人、
(5) そして費用のことを含め、丁寧にきちんとした説明のできる人
簡単に述べると、こんなところです。なお、この点については別稿の「会社経営と顧問弁護士」の6項もご覧ください。
5 弁護士との会話
弁護士と会うことになったら次のような順序で会話を進めてみてはどうでしょうか。
(1) まず最初は当然ですが、あなたの抱えていらっしゃる問題に関し、出来事やこれまでの事実経過、登場人物、その他大事なことを説明します。
(2) そして手持ち資料があれば全部持参して、説明して下さい。
(3) つぎに、ご自分の希望する解決内容を明確にして伝える。
(4) さて、ここからが大切です。すぐに弁護士の回答を求めないで下さい。自分の説明で足らないところ、自分の説明で疑問な点を相談相手の弁護士から沢山、質問してもらって下さい。(多分あなたの説明の途中でいろいろ質問が飛んでくると思います)。
問題を広く、深く捉えようとすれば、あなたの説明に対して相談相手の弁護士に疑問や質問が沢山湧いてきて当然です。あなたの説明に対して質問のない弁護士、あなたに、すぐ答えや見通しを語り始める弁護士は、おおかたの場合、要注意です。それは、あなたの説明が必ずしも十分ではないのに、それに気がつかないで答えを出そうとしているからです。
あなたの説明が十分でないことは仕方がありません。問題解決に必要な情報を一度で、過不足なく弁護士に伝えられる依頼者は、まず、いらっしゃいません。ですから、大切な事は、相談相手の弁護士が依頼者のご説明の不十分な点を発見し、質問を通じて事案の全体像を出来るだけ完全なものにして行くことであり、それこそが弁護士の最初の大仕事なのです。
(5) このようにして弁護士自身、事案の全体像がある程度つかめたところで、ご自分の求める解決が実際に実現可能かどうか、可能ならば、どのような手順を踏んで、いつ頃、実現するかを尋ねてみて下さい。
(6) そして最後が費用の質問です。
(7) 弁護士の回答や説明が口頭だけか、紙に書いてくれるのか、ここも大切です。一般市民が弁護士の話を、その場で十分理解することは、ほとんど不可能です。家に帰って反芻しなければなりませんが、その時に弁護士が相談の要旨と回答、そして費用のことを紙に書いて渡してくれたら大助かりです。
以上のような会話を通して見えてくる弁護士の反応は、その人の経験、法的技能、理解のスピード、性格などによって随分異なります。
どれくらい具体的に回答、説明してくれるか。その説明が納得できるか。このあたりを自分なりに観察、評価してその弁護士の力量や人柄を見抜くことが必要です。
結局のところ、相談相手の弁護士が、あなたにとって良い弁護士であるか否かは、法律相談という形で会話をしてみなければ分からないという当たり前の答えになってしまいました。
6 弁護士との会話を充実させる業務案内風おしゃべり
メニューがなければ料理を選べません。
しかし、どれ程立派な料理のメニューが示されても、結局、食べてみなければ、美味しいか不味いか分かりません。
それでも、今までの飲食の体験や店の評判を聞いておくことでこれから出てくる料理の美味しさの想像はできます。
それに比べて、法律相談の世界は、今まで一度も弁護士を利用した経験のない方々が圧倒的に多く、だから弁護士業務のメニューを見ても、満足のゆく法的サービスを受けられるかどうかの見当がつきません。
法律事務所の場合は、街のレストラン程、評判が出回ることもなければ情報も多くありませんので、この点でも満足のいく法的サービスを受けられるかどうかの予想がたてにくいです。
弁護士はどんな仕事をしている職業人なのか。自分の抱えている問題解決に役に立つ助言や指針を与えてくれる存在なのかどうか、相談者にとって、なかなか分かりにくいです。
そこで相談者のこのような不便を少しでも解消できるように、弁護士は、どんな時に、どんな風に役立つのか、そのイメージをお伝えしたくて業務案内風の文章を書いてみました。目次をご覧になってお読み下さい。
このささやかな工夫が、これから法律相談に行かれる方々にとって、弁護士との間で交わされる会話のイメージ作りに役立ち、ご自分の言いたいことを十分弁護士に伝えることのできる手がかりとなれば幸いです。
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